労働金庫業態では健康管理課題を業態共通の経営戦略として位置付けて、「労働金庫健康経営宣言」を策定しています。当金庫では「労働金庫健康経営宣言」に基づき、すべての職員が健康でいきいきと働くことのできる職場づくりを行うため、2022~2024年度までの行動計画である「新潟県労働金庫行動計画」を定めています。
また、「労働金庫健康経営宣言」および「新潟県労働金庫行動計画」を基に、単年度の行動計画である「健康経営実施計画」を策定しています。「健康経営実施計画」では、具体的な目標を定め、各施策の実施と効果の検証を行っています。
Ⅰ.労働金庫健康経営宣言(全国労働金庫協会策定)
1.労金業態は、「働く人の夢と共感を創造する協同組織の福祉金融機関」として、その社会的使命と役割を果たすために、職員が心身ともに健康で安心して働き続けることができる職場づくりを目指します。
2.各金庫・関連事業団体は、職員が心身ともに健康で安心して働き続けることができる職場づくりに向け、具体的な施策を積極的に推進します。
3.労金業態に働くすべての役職員並びにその家族は、ヘルスリテラシーの向上と健康な心身づくりを自律的に実践します。
Ⅱ.新潟県労働金庫行動計画
取組期間:2022年~2024年度 | ||||
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健康管理態勢組織の活性化や、生産性の向上、職員のモチベーションアップ等を目的として職員が健康でいきいきと働くことができる職場をめざし、健康経営の取組みをすすめる。
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健康診断・事後措置定期健康診断後の再精検(要医療、要精密検査該当者)受診率100%を維持するほか、産業医や産業看護専門職による保健指導を通して自己保健義務意識の向上をはかる。
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過重労働対策総労働時間を基準とした勤務時間管理を行うほか、長時間労働に対する意識改革をはかる。
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メンタルヘルス対策心理的安全性を高める取組みを進めるほか、職員のメンタルヘルスケア(セルフケア、ラインケア)に関する意識を高める。
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受動喫煙対策全店の全面禁煙を継続するほか、喫煙者の禁煙を支援する。
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Ⅲ.健康経営の推進体制
主体 | 役割 |
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理事長 | ・健康経営推進の最高責任者として全体を統括する。 |
常務会 |
・健康経営の推進方針を決定する。 ・健康経営に関する課題のPDCAについて、産業医・産業看護専門職が同席のうえ、四半期ごとに実施する。 |
人事担当代表理事 | ・健康経営責任者として各施策の実施を統制する。 |
保健衛生委員会 | ・健康経営実施計画の進捗状況を踏まえて、評価および改善について協議する。 |
人事部 | ・健康経営の主管部(事務局)として、健康経営実施計画の各種施策を実行する。 |
産業医 |
・保健衛生委員会において医学的見地から意見具申するほか、職員に対する健康教育や面接指導を行う。 ・健康経営施策の実施に関して、保健衛生委員会において以下の内容等について協議する。 ①職員の健康課題 ②健康経営施策に関する中長期的な方針の策定 ③健康経営施策の効果検証 ④職場巡視および職員面談等を通じて、職員から収集した情報をもとにした意見具申 |
産業看護専門職 | ・職員が自律的に健康の保持増進を行うよう指導する。 |
部店長 | ・健康経営推進者兼衛生推進者として、部店内の健康経営施策の推進や、実施状況の把握、人事部への報告・相談等の役割を担う。 |
労働組合 |
・健康経営実施計画の策定過程で職員の意見を聴取する。 ・保健衛生委員は各種施策について主体的にかかわる。 ・健康経営実施計画の内容について組合員に周知する。 |
職場衛生委員会 (本店・事務集中センター) |
・事業場(本店・事務集中センター)の健康障害の防止および健康の保持増進等を調査・審議する。 |
衛生管理者 (本店・事務集中センター) |
・事業場(本店・事務集中センター)の衛生状態、作業環境に問題がないか等を巡回等で確認する。 |
Ⅳ.2022年度新潟県労働金庫健康経営実施計画
1.2022年度目標(抜粋)
<目標設定に至った背景>
業務内容の拡大等に伴い、業務密度が高まっているほか、新型ウイルス禍における職員間のコミュニケーション低下等に起因して、メンタル不全による休職者や、業務効率が低下している職員が少なからず発生しています。このことから、「健康度」「安定度」の各区分における目標数値を設定し、アブセンティーイズムやプレゼンティーイズム、ワークエンゲージメントの状況を把握したうえで、適切な対応策を検討・実施することとしました。
また、当金庫における健康経営の最終目標は全職員が各自の能力を最大限発揮することによる生産性の向上であり、成果指標として「労働生産性(労働時間あたり付加価値)」の目標数値を設定しています。
区分 | 項目 | 指標 | 2021年度値 | 2022年度 目標 |
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健康度 | 身体的指標 | 健康診断結果 ※有所見者率 |
8.3% | 8.3% |
私傷病休職者数 | ‐ | 前年度比削減 | ||
アブセンティーイズム指数 ※私傷病欠勤・休職の延べ日数 |
625日 | 625日 | ||
プレゼンティーイズム指数 | 7.6 | 7.6 | ||
生活習慣指標 | 運動習慣者比率 | 15.0% | 15.5% | |
適正体重維持者比率 | 67.2% | 70.0% | ||
飲酒習慣者率 ※ほぼ毎日飲酒している割合 |
17.8% | 16.0% | ||
喫煙率 | 14.0% | 12.0% | ||
心理的指標 | ワークエンゲージメント指数 | 3.2 | 3.5 | |
就業関連指標 | 平均総労働時間 | 1717.3時間 | 1710.0時間 | |
平均時間外労働時間 | 149.4時間 | 140.0時間 | ||
年休取得 | 14.0日 | 14.2日 | ||
ストレス指標 | ストレスチェック指標 ※高ストレス者率 |
10.0% | 8.0% | |
安定度 | 離職率 | 離職率 | ‐ | 前年度比削減 |
平均勤続年数 | 18年9ヵ月 | 18年10ヵ月 | ||
労働 生産性 |
労働時間あたり付加価値(理論値) | 業績数値÷全職員総労働時間 | 70 | 75 |
※「‐」は非公表
・アブセンティーイズム
健康問題による欠勤で労務提供ができないこと
・プレゼンティーイズム
健康問題により業務効率が低下していること
・ワークエンゲージメント
仕事に対してポジティブで充実した心理状況
2.課題と期待する効果
(1)健康経営で解決したい経営上の課題
職員が健康でいきいきと働けるよう、自律的な健康づくりの支援や、組織の持続的な価値向上が課題であり、以下の4点が主な課題であると認識しています。
①健康意識の醸成
②食事・運動など生活習慣の見直し
③メンタルヘルス対策
④エンゲージメント向上
(2)健康経営の実施により期待する効果
取り巻く環境が変化するなか、人生100年時代に職員が健康を自分ごととして捉え自律的に健康づくりに取組むことにより、組織が活性化され、理念の実現や社会的役割を果たすことにつながると考えています。
さらに、職員が健康でいきいき働き、幸福を感じる職場環境を構築することにより、ろうきんブランドの向上や人材の確保、それらによる企業としての労働生産性を向上させる効果を期待しています。
3.健康経営戦略マップ
※パソコンの場合、画像をクリックすると大きな画像で確認いただけます。
※スマートフォン・タブレットの場合、画像をタップのうえピンチアウトすると拡大して確認いただけます。
Ⅴ.各種指標の経年変化
項目 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 |
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定期健康診断受診率 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
定期健康診断後の精密検査受検率 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
定期健康診断有所見者率 ※2020年度より健診機関による基準の見直しあり |
20.9% | 8.4% | 8.3% |
ストレスチェック受検率 | 100.0% | 98.9% | 94.4% |
高ストレス者率 | 7.2% | 7.4% | 10.0% |
保健指導継続率 | 100.0% | 80.0% | 100.0% |
保健指導対象者の治療継続率 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
平均年間所定外労働時間 | 170.7時間 | 118.0時間 | 149.4時間 |
平均年次有給休暇取得日数 | 13.5日 | 13.4日 | 14.0日 |
喫煙率 | 16.8% | 14.3% | 14.0% |
運動習慣者率 | 17.2% | 13.3% | 15.0% |
メンタルヘルスマネジメント検定試験累積合格者数 | Ⅱ種:141名 Ⅲ種:146名 |
Ⅱ種:168名 Ⅲ種:182名 |
Ⅱ種:175名 Ⅲ種:196名 |
労働時間あたり付加価値 ※理論値 |
62 | 80 | 70 |
<健康経営の取組みによる効果>
当金庫では、職員の「自己管理」を支援するという立場から各種取組みを実施してきましたが、2019年度より「健康経営実施計画」を策定し、金庫と職員が一体となった「共同管理」という考え方に方向転換し、健康経営を推進してきました。
この間の様々な取組みにより、職員から「健康を自分事として考えるようになった」「管理職が部下の健康管理に関心を持つようになったと感じる」「健康経営計画の趣旨を理解することで、健康に働き続けることの重要性を認識し、自身の働き方を見直す機会となった」などの意見・感想などがあり、健康に関する意識が醸成されていると評価しています。
健康への意識の高まりにより、労働時間関連や運動習慣者率等の指標の改善につながっています。また、健康経営の効果を表す指標である「労働時間あたり付加価値(理論値)」は2019年度比で増加しています。
Ⅵ.健康経営の推進に関する主な取組み
1.生活習慣病対策
生活習慣病等の重症化予防は、HbA1c(過去2ヵ月程度の血糖値の平均)高値を改善し合併症を予防する必要があると産業医から意見があったことから、HbA1c高値の者を対象として産業医による生活習慣病改善セミナーを開催しました。
セミナーでは、参加者各々がHbA1cの推移や食生活、運動習慣の改善状況を報告したほか、意見交換や産業医の指導を実施しました。参加者のアンケートでは、「率直な意見交換ができた」「改善が進んでいる職員の経験談に触発され、自分自身の行動を見直すきっかけとなった」「参加者の連帯感が高まった」等の声がありました。結果、2020年度の対象者10名中7名のHbA1cが翌年の定期健康診断結果で低下等の効果がありました。
このような取組みにより、定期健康診断有所見者率は2019年度より毎年度逓減しています。
<取組内容>
セミナー参加者
2019年度:対象者10名中10名参加(参加率100%)
2020年度:対象者10名中 8名参加(参加率80%)
2021年度:対象者10名中10名参加(参加率100%)
2.禁煙対策
タバコの健康被害等を繰り返し周知することと併せて、新型ウイルス感染防止および受動喫煙防止等を目的として、建物・敷地内の全面禁煙を実施しました。喫煙者自身の呼吸器疾患等を防止することや、喫煙者が新型ウイルス感染時に重篤となる危険性が高いこと等を踏まえ、喫煙者を減らす取組みを強化することが課題となっています。
喫煙率低下の取組みとして、タバコの健康被害についての啓発実施や、健康指導の際に、禁煙に向けた啓発を行うほか、健康保険組合の制度を活用した禁煙補助剤の支給や禁煙達成者の紹介を行っています。
また、全店の建物・敷地内の全面禁煙を継続するとともに、公共の場所など喫煙禁止場所で喫煙しないことや、たばこのポイ捨て禁止等、社会マナーについての啓発をしています。
これらの取組みにより、喫煙率は2019年度より毎年度逓減しています。
〇禁煙の日の周知ポスター
〇禁煙補助剤による禁煙の取組み
禁煙取組希望者に禁煙補助剤を支給し、6ヵ月後に効果測定(禁煙の達成)を行っています。
2020年度:希望者16人のうち1人達成
(一人当たり費用補助:4,340円)
2021年度:希望者1人のうち1人達成
(一人当たり費用補助:5,573円)
3.女性特有の健康課題
女性はライフステージにより女性ホルモンが大きく変動し、体調面で影響を受けやすいと言われています。女性特有の健康課題により仕事の生産性が低下することや、自身の望むキャリアを諦める女性がいることは当金庫にとって損失となります。当金庫では、女性にとって働きやすい職場環境を構築するため、女性の健康課題を女性だけの課題とせずに、性別を問わず課題として共有する取組みを実施しています。
そのために、全職員を対象に女性の健康課題に関するセミナーを実施し、職員全体のヘルスリテラシー向上に取組んでいます。
<取組内容>
テーマ「男性にも知ってほしい、女性の健康を考えるセミナー」
〇内容
・月経や更年期の辛さ等、働く女性の多くが抱える悩みについて具体的な対応策
・子宮頸がん等、受診行動の大切さ
・周囲の思いやりと支援
95.3%
※アンケートで「とても満足」「満足」と回答した割合
〇セミナー風景
4.運動習慣の定着
職員一人一人が健康を自分ごととして考え、健康経営への参画意識を高めるため、毎日ラジオ体操を実施しているほか、運動部への活動支援や部店一丸となって行う「健康協調月間」の取組み等、運動習慣の定着を図っています。また、これらの施策によって、健康づくりをきっかけとした良好なコミュニケーション環境の構築を目指しています。
<取組内容>
〇ラジオ体操
2021年度参加率67%
〇運動部(フットサル部)
〇健康強調月間
(健康強調月間を利用した登山風景)
〇階段利用の促進ポスター(本店)
5.サプライチェーンへの働きかけ
健康経営を当金庫だけで取組むのではなく、社会全体での健康に寄与できるよう取引先企業とノウハウの共有や意見交換を行っています。主な内容は以下の通りです。
・当金庫が実施している「ノー残業デー」や「時差勤務」等について実施内容・留意点等の説明
・当金庫の産業看護専門職(健康経営エキスパートアドバイザー)による支援
・働き方改革等に伴うしわ寄せ(適正なコスト負担を伴わない短納期発注や急な仕様変更、長時間労働に繋がるようなタイトな納期)は行わないことを確認
6.商品・サービスを通じた健康増進について
当金庫は、勤労者およびその家族の健康維持・増進のため、医療費・入院費・介護設備費用等を資金使途とした福祉ローンを商品ラインナップに備えています。
以上